「お酒にまつわるトラブルが多い。」
「いつも酒を飲むことを考えている。」
「喧嘩や暴力になるときはお酒を飲んでいるときが多い。」
このように、日常生活に支障が出ているのに、アルコールを止められない、家族が止めてくれと言っても止められないのであれば、それはアルコール依存症です。
アルコール依存症は、放っておけば、本人の健康、キャリアに大きなダメージを負いますし、家族に不幸な人生を歩ませることになります。
依存症は、自分の意志では治らない病気です。また家族の支えで治せる病気でもありません。
依存症治療には、専門家による適切な治療が必要です。
アルコール依存からの回復には心理カウンセリングが有効に働きます。
ここでは、アルコール依存の解説と、その治療法を解説します。また大崎セラピールームが行うアルコール依存に対するカウンセリングも紹介します。
目次
アルコール依存症とは
アルコール依存症とは、日常生活に支障が出ているのに、止められない飲酒行動の事です。
飲んではいけない時、場所で飲んでしまう人もアルコール依存症と言えるでしょう。
例えば、仕事中とか、仕事の面接日とか、緊張する会議や集会の前などに飲酒をするケースも同様です。
女性の場合は家族の食事を作りながらお酒を飲んで、料理が出来るころには起き上がれないくらいに酔っぱらってしまう(キッチンドリンカー)主婦の数も相当数いると言われています。
また生活に支障が出ているわけではないけれど、「休日には昼から飲んでいる」、「どうやって帰ったのか覚えていない」、「二日酔いで会社を休む」、「休肝日がない」などもアルコールの飲み方に問題があります。
飲酒が習慣化され、夕方になるとアルコールを飲むことばかり考えているというのも、アルコール依存症予備軍と考えていいでしょう。
DV(ドメスティックバイオレンス)(男から女への暴力)には、アルコールが絡んでいることが多いのも特徴です。
アルコール依存症の家族への影響
依存症は本人だけの問題ではありません。家族を巻き込んで、パートナー(妻)や子どもたちに甚大な被害を与えます。
どのような影響を与えるか、解説します。
パートナーや親との共依存
アルコールを止めさせようと、パートナー(妻)や親が奮闘しますが(アルコールを隠す、お金を渡さないなどの監視コントロール)、それがますます本人の依存を深め、自分で立ち上がる力を奪ってしまいます。
パートナーの方も、こんなアルコール依存症の人の面倒を見るのはコリゴリだと思いながらも、別れることが出来ません。このような関係を共依存と言います。
共依存になることで、妻や家族(主に母親)が、依存症者の心配やケアで、自分の労力を使い切ってしまいます。そのため、自分の人生や家族の将来を考える余裕がなくなります。
子どもたちへの影響
アルコール問題は、DVへ発展することが多く見られます。当然DVを受けたり、父親が母親に暴力を振るうのを目撃した子どもたちは、心に傷を抱え、その後の人生に大きな影響をもたらします。
安心し安定した家庭ではないので、落ち着きがなかったり、感情が不安定だったりします。感情の統制が出来ないのでちょっとしたことで切れたりします。そのため友人が出来ず、学校で不適応を起こしがちになります。
感情が不安定なまま、成人になると、その不安や恐れなどを隠すために、アルコールや様々な依存症になりやすくなります。人間関係も不安定になり、信頼できる人間関係が築けません。学校や仕事、恋人関係も続かないので、結果、人生が生きづらくなります。
何故アルコール依存症は男性に多いのか?
なぜアルコール依存症には男性が多いのかというと、
「男は強くなくてはならない」
「男は負けてはならない」
「男はがんばって、努力して、苦難を乗り越えなくてはならない」
という社会や世間が要請する男性の通念(ジェンダー、男らしさ)に囚われているからと考えられます。
男の通念の元にあるものは、「男は力(パワー)がないといけない」ということです。
アルコールを飲んだ時の、なんでもできると思う万能感や、普段は自信なくオドオドしているのに、アルコールを飲むと、陽気になり、弁舌がさわやかに滑らかに会話ができるようになります。
酔いの中で、パワーを得たと感じる(錯覚)ことが出来きますが、アルコールが抜ければ、その万能感がなくなり、また元の自信のない自分に戻ります。その(嘘の)万能感を得るためにアルコールが手放すことが出来なくなります。
男らしさの病
多くの男性が、勝ち負けや、序列にこだわりを持っています。特に依存症の男性は、人間関係で「ばかにされた」、「下に扱われた」、「上から物を言われた」と、上か下かに敏感です。
自分が下にならないようにするためには、力(パワー)が必要です。多くの男性が力(意志の力)で自分の能力を上げ、困難を克服し、他人をコントロールし、他者から承認や賞賛を得ることで人間(男)になれると思っています。
力(パワー)願望は、それとは裏腹に、内心、常に自分が負けているのではないか、勝ったとしてもいつか負けるのではないかと、怯えを抱えることになります。しかし、多くの男性は、弱音を吐くことを男のプライドが許しません。
そのストレス・プレッシャーに耐えられずに、アルコールの(偽の)力を借ります。アルコール依存の人は、アルコールの力を得ることで、ようやく自分は力を持ったと自任することが出来るのです。
依存症の原因
依存症になる原因は、様々考えられます。これが原因だと一つに特定することも困難です。様々な要因やきっかけで、依存症になる可能性があります。
ここでは代表的なものを解説していきます。
世代間連鎖
特にアルコールに関しては、世代間で連鎖しやすいと言われています。父親、祖父、叔父、母方の祖父、叔父などに、アルコール問題を抱えているパターンが頻繁にみられます。
アルコール問題だけでなく、それに付随するDV、うつ病、共依存関係、トラウマなど、依存症家族特有のコミュニケーションパターンが見られ、それらが世代間連鎖していきます。
なぜ、世代間連鎖がしやすいのかというと、子どもたちは、親たちのコミュニケーションを見て育ちますので、親の会話や考え方が内在化されます。その中で育った子どもたちが大人になれば、自分の親と同じようなコミュニケーションをとり、親と同じような人生観、世界観を持つようになってしまいます。
過酷な幼少期体験(ACE’s)
幼少期の家族の中で、暴力、ネグレクトなどの虐待があった、親が過剰に押し付けた親の価値観やしつけ(無理強いする受験勉強、学歴主義、過剰な習い事など)をそのまま内面化して大人になった場合、自分があるがままでいいと感じないで育ちます。
虐待の場合は低い自尊心のまま大人になりますし、親の設定した高いハードルや期待を強いられた場合は、常にこのままの自分ではいけないと、もっと努力が必要だと思っています。
そのような家庭環境で育った場合、常にプレッシャーやストレスにさらされているので、アルコールを飲んだ時に、ようやくリラックス感や解放感を感じることが出来ます。リラックスするためにお酒を飲むことを学習するため、その使用が止められなくなります。
依存症の治療、対処法
代表的なアルコール依存症に関する治療法、対処法を紹介します。
12ステップ自助グループ
依存症(アルコール)は以前は治らない病気だと言われていました。自分の意志の力でも、医療でも治らないと言われていたものを、アルコール依存当事者たちが集まり、ただ自分の話をし、仲間の話を傾聴するという12ステップでアルコール依存から回復していきました。
専門家を置かず、当事者たちだけで、12ステップと12の伝統というガイドに従い、自分の話をし、仲間の話を傾聴するというスタイルでアルコール依存を克服していきました。
その自助グループは、自分たちの寄付だけで運営し、AA(アルコホリック アノニマス)と呼ばれています。
それから、ギャンブルやドラッグなどのアルコール以外の依存症、依存症を抱える家族にも同じスタイルが持ち込まれ、依存症の回復の基礎を作ってきました。
まずは、このような12ステップの自助グループへの参加が代表的な治療法の一つです。
アルコール依存からの回復にはこの12スッテプの自助グループの参加が必須になります。
またアルコール依存症を抱える家族の自助グループもあり(アラノン、AL-ANON)、家族の参加も依存症回復には大切な要素になります。
日本でも、薬物からの回復施設では「DARK」(Drug Addiction Rehabilitation Center)は12ステップのミーティングを基本にして、薬物からの回復を目指す民間の施設があります。日本のアルコール依存の回復を目指す会としては「断酒会」が有名です。
医療につながる
アルコール依存などの物質依存については、病気ですので、医療の対象です。抗酒剤などの服用や、酒量のコントロールを行っていきます。
また依存症による、様々な症状(内臓疾患、うつ、離脱症状による幻聴幻覚など)がでていることがありますので、それらの治療を並行して、依存症の治療を行います。
現在では、依存症を専門に扱っている病院があり、診察、集団療法、家族会、心理教育、カウンセリングなどのサービスを提供しています。
カウンセリング
依存症のカウセリングとしては、認知行動療法や解決志向型セラピー(ソリューション・フーカスド・セラピー)を行います。
認知行動療法では、アルコールを飲んで得られる報酬(憂うつが晴れた、疲れていたのにがんばれた、スッキリした、)を学習してしまっています。依存することと報酬を得ることの因果関係が出来ています。
日常の問題の解決法として、アルコールに依存することが不可欠になっています。
その誤って学習した、因果関係や、認識や行動、意識を、依存しないで切り抜けていくスキルを身に着けていきます。
解決志向型セラピーでは、「お酒を止められたとして、どういう生活をしていますか?」と初めに目標を設定して、「それを行うには、今日何をしたらいいですか?」と目標から今を逆算していき、今日やる行動を決めていきます。
またアルコール依存は、本人だけでなく、家族の協力も必要です。家族がカウンセリングに出たり、家族会に出て、本人の対応の仕方を学んだり、自分を振り返ることも必要です。
依存症に対する大崎セラピールームのカウンセリング
大崎セラピールームの、依存症に対するセラピーを紹介します。
家族の対応
アルコール依存症の男性の多くは病識が低く、本人が来ることはめったにありません。最初の相談は多くは、家族の方(妻、母親)です。
まず、家族の対応に仕方について話をします。たいていは、家族が過剰に本人のお世話(お酒を取り上げたり、お金をコントロールしたり、行動を監視したりなど)をしています(共依存)。
本人の行動の結果の責任は本人に取らせるようにさせます。その際暴力など、身の危険がある場合は、警察を呼ぶ、逃げる場所を確保しておくなど、身の安全の確保をします。
本人の対応
12ステップの自助グループに参加してもらいながら、面接を行います。
依存症は止めたくても止められない病気です。セラピーでは本人がお酒を飲むことで本当は何を欲しているか、アルコールによって、何を得ようとしているのかを話し合っていきます。
また幼少期の傷つき体験や、家族の連鎖(アルコールや暴力)についても話していきます。そこで身に着いたコミュニケーションのパターンや、考え方を、無理がある物であれば修正していきます。
家族面接
本人を除いた家族の面接や、本人を含めた家族との面接を行います。大体は、本人も家族も、多くは、自分の本心が言えずに、コミュニケーションが空回りしています。
本当は何を伝えたいのか、本当はどう感じているのか、どうしてほしいのかを正直に、I(アイ)メッセージで伝えます。
グループ療法
幼少期に、親からの虐待体験があり、トラウマ体験を持っている方が、依存症の方に多く見られます。
癒しのためのトラウマワーク(嘆きの作業)をサイコドラマやエンプティチェアを使って、グループで行います。
ワークのなかで、傷ついた幼少期の自分と出会い、傷ついた自分に共感し、幼少期の自分を受け入れていきます。
メリット
セラピーが有効に働くと、以下のようなメリットが得られます。
・健康が回復していきます。
・家族の関係が改善していきます。
・お酒のない人生に希望が持てます。
効果
セラピーが有効に働くと、以下のような効果が得られます。
・お酒を飲まない期間が延びます。
・心の平安が得られます。
・家族と言い争う時間が減っていきます。
費用
依存症は一朝一夕で治るものではありません。長い期間を要することがありますが、ここでは概ねの概算として説明をいたします。
セラピストとの関係を作る期間(1~3回)、とセラピーがクライアントに有効かどうかを見極める期間(1~6回)を目途にしていください。(セラピーが有効でないと判断した場合は、他所の治療機関やセラピー機関を紹介します。)
それから、家族のコミュニケーションの修正、本人の行動修正(依存行動になるきっかけになるものを避ける環境つくり)、目標の設定をしていきます。(6~12回)
本人の傷つき体験の修復、癒しの作業、将来の人生の設定(6~12回)を行っていきます。
半年から1年間を目途として考えてください。
依存症に悩んでいる方、家族の方大崎セラピールームにご相談ください。
依存症は家族の関係性の中で起こります。
多くのアルコール依存症者は、自分を守るため、家族を守るために、やむにやまれず、飲酒をすることで自己処方をしています。依存症になることで生きのびてきたのです。
依存症にならなければ、もっと悲惨な状況になっていたかもしれません。
しかし、依存症は止めたくても止められない病気です。依存症を抱えた家族も大変傷ついていますし、子どもがいる場合は、子どもの将来への影響も大きいのです。
依存症は自分の意志の力では治りませんし、家族の愛(支え)だけでも治りません。長期的な専門家の力と自助グループの力が必要です。
またアルコール依存症は、男性特有のプライドの問題でもあります。
大崎セラピールームは、アルコールから離れ、自分の人生と、家族や大事な人との親密な人間関係を作っていく、お手伝いをさせていただきます。