双極性障害とは、いわゆる“躁うつ病”と言われているものです。

普段は気分が落ち込んで、憂うつで抑うつ的なのに、急に、調子が良くなり、多弁で、寝ないで活動しても平気な躁状態なります。躁状態時は、あきらかに過活動で、言動があっち、こっちにいったりで、まとまりがありません。

そして、またパタッと収まって、抑うつ状態になり、そのサイクルが繰り返されます。

この病気は、本人も苦しいですが、周りにいる人も、躁状態の時の、攻撃的な言動、脈絡のない行動や、常識では考えられない行動に、巻き込まれてしまい疲弊してしまいます。

ここでは、双極性障害と、その治療法について概説していきます。

双極性障害とは

双極性障害とは、躁の状態とうつの状態が繰り返される病気です。

躁といわれるいる状態は、普段私たちが日常使っている
「あの人、今、躁っぽいね」ものをほぼさしています。

解放感と爽快感で満たされて、なんでもできるような万能感があり、夜寝ないで活動でき、早口で多弁になります。しかし、いろいろな考えやアイディアが湧き出てきて、注意が散漫になり、一事に集中することが出来ませんから、一つの物を完成させることが出来ません。一方で、攻撃的で、暴力的なりなります。

うつ状態は、気分の落ち込み、憂うつ、意欲の低下、楽しみの減退、死にたい、消えたいなどの希死念慮が見られ、また身体症状としての不眠・過眠、疲労感、他様々な不定愁訴が出てきます。

Ⅰ型とⅡ型がある

Ⅰ型は、躁状態と抑うつのサイクルがあるものです。


躁状態とは、日常生活に支障が出るほどの過活動状態です。例えば、急にマンションなど高額な買い物をしたり、上司と衝突をして急に仕事を辞めたり、外で他人とけんかをして警察沙汰になったり、周囲に迷惑をかけ、時には入院が必要なレベルになります。

期間としては短く1週間くらいしか続きません。

Ⅱ型は、軽躁状態と抑うつのサイクルがあるものを言います。

軽躁状態とは、はたから見ると元気で調子よさそうに見える状態です。気分が高揚し、眠らないでも大丈夫で、仕事もバリバリこなすことが出来ます。日常生活に支障が出ているわけではないけれど、その人らしくない元気の良さだよね、という印象を与えます。

期間としては、数日から数週間続くと言われていますが、軽躁状態と抑うつ状態が、短期間で変わったり、一日の内で変わったりします。

発見・診断が難しい

特に軽躁状態の場合は、活動的で、創造的で自信に満ちて、仕事も良くできるので、本人としてはこの状態を続けたいと思います。

またこの軽躁状態は問題とは思いませんので、抑うつを治療して欲しいと思って受診するので、診断もうつ病ということになりやすくなります。

うつ病が15人に1人なのに対して、双極性障害は100人に1人、日本の場合は500人に1人と言われていますので、医者側もまずうつ病と診断しやすくなります。

またさらに難しいことに、双極性Ⅱ型は、抑うつ状態と軽躁状態が交代することがあるので、医者側も、この調子が、軽躁状態なのか、その人固有の気分変動なのかを判断することは非常に難しいのです。

薬の処方が難しい

診断が難しい上に、うつ病と、双極性障害の処方する薬は、全く違います。

双極性障害には、躁を抑えるために、リチウムなどの気分安定薬と、もともと統合失調症に使われるクエチアピンなどの非定型抗精神病薬を使います。

うつ病に使う、SSRIなどの抗うつ薬はあまり使いません。

本当は双極性障害なのに、ずっとうつ病の薬を飲んでいて、全くよくならないということが見られます。

また、双極性障害の方が、うつ病の薬を飲むことで、躁転してしまい、重篤(自殺など)な結果になるケースがみられることがあり、医者も診断、処方に慎重になります。

さらに、双極性障害の躁状態と抑うつ状態が変動が激しい場合、躁の時にうつの薬を飲んだり、うつの時に躁の薬を飲んだりする可能性が高くなるので、服薬が大変難しくなります。

双極性障害かどうかの見極めは、専門医でも難しいので、主治医としっかりと信頼関係を持つ必要があります。時間がかかるかもしれませんが、慎重に診断をしてもらい、薬を処方してもらう必要があります。

双極性障害の原因

双極性障害の原因ははっきりわかっていません。様々な要素が重なって発症すると思われるので、一つだけ因果関係に特定することは困難です。

ここでは代表的なものを解説していきます。

遺伝

特定の遺伝子が発見されてはいませんが、家族内に双極性障害の人がいる人といない人では有意差があると言われています。

また、体質的に、ストレスがかかったときに、双極性障害のような反応を示しやすいということが考えられています。

日常のストレス

家族関係の過剰なストレスがあり、大きな心理的葛藤を抱えている場合や、職場や環境、時代による社会的要因が重なって、双極性障害を引き起こす引き金になると考えられます。

躁的防衛(マニック・ディフェンス)を使っている

見たくない辛い感情があったり、うつ状態を味わいたくない時に、過剰に自分をハイにして感情を見ないようにして、過活動にする躁的防衛(マニック・ディフェンス manic defense)を行います。

現代社会では、軽躁的な方が適応的であり、他人からの評価も高いので、躁的に振る舞うことが本当の自分だと思い込みます。抑うつの自分を排除して、無理に気持ちを上げて、日常生活を乗りきるというのが自分の対処法になっている場合があります。

その結果、抑うつ感と(軽)躁状態が繰り返されるような状態が常態化したと考えられます。

双極性障害の治療

躁状態が激しい場合、日常生活を送るのがままならなくなったり、自害他害の恐れがある場合は、入院治療を考える必要があります。

薬物療法

極端な気分の上下を抑えるには、服薬によって、気分の安定を図ります。
躁病の時は、気分安定剤や抗てんかん薬、非定型抗精神病薬が使われます。
うつ状態の時は、気分安定剤が使われます。

上に書いたように処方や服薬が大変難しいので、主治医と十分に相談して、自分に合った処方を出してもらう必要があります。

カウンセリング

自分の感情の起伏をモニタリングして、感情をコントロールします。

自分では自分の状態が判断しにくかったり、自分は調子がいいと思っていても、人から見ると、躁転しているようにみえることがあります。

また、どういう時に気分があがるのか、気分が下がるのかパターンを知っておくことが大事です。周期的なものであれば、事前に予防をしておくことが可能になります。

また、認知行動療法を使って、自分が疑いもしなかった信念
例えば、
「いつも明るく元気でなければいけない。」
「いつもポジティブでないといけない。」
「いつも積極的に、人生を成長させていかなければいけない。」

を、もう少し現実にあったものへ変えていく事で、気分や行動を変容させていきます。

家族の協力・環境の調整

本人の躁状態が、激しい時に(過度な浪費、散財、攻撃的な言動、また警察沙汰になる喧嘩や暴力、唐突な辞職、逸脱した性的行動など)は、家族への被害は大きいものになります。

前もって、本人と話し合い、入院を含め、このような逸脱した行動が出た場合には、どう対応するか両者が納得して、決めておきます。また病院にも相談し、躁状態になったときは、すぐに入院できる体制を頼んでおく必要があります。

双極性障害に対する大崎セラピールームのカウンセリング

大崎セラピールームでの双極性障害の方へのカウンセリングを解説します。

モニタリング

感情の起伏のモニタリングをしていきます。どういう時に気分があがっていくのか、下がっていくのか。どんなきっかけがあるのか。パターンはあるのか。周期はあるのか。

自分の感情の起伏のパターンを知ることで、予防を立てやすくなります。

また、躁になったときの、対応の仕方を検討します。自身も家族も、傷つきが最小限になるように、入院することも含め、話しあっておきます。

感情のコントロール

認知やそれにともなう感情を検討して、自分が思い込んでいる認知、例えば
「いつも明るく、積極的でないといけない」
「暗い人間は、人から嫌われる」
「つねに成長していなければいけない」

などを、本当にそうなのかを、検討していき、現実にあった思考や信念にしていきます。

喪の作業(モーニング・ワーク mourning work)

自分の感じたくない辛い感情や、悲しい記憶が出てきたときに、躁的になって、それらの感情を見ないようします。それを躁的防衛と書きました。

悲しみや、喪失を否認(あるのに見ないように)することで、まったく苦痛を感じない人生を送ろうとしてしまいます。

自分の負の感情を否認して、明るいだけの自分で振舞うことで、過剰に現代社会の評価に適応していこうとするのですが、それは無理があるので、息切れを起こします。それがうつ状態です。

そのような適応を続けていくうちに、自分の感情が分からなくなり、感情がないロボットになっていきます。

失ったものをきちんと悲しみ、嘆く作業をすることで、今の自分を受容し、自分の人生を生きていくことが出来ます。無理な躁的防衛を使わずに、自分らしく生きていくことが出来ます。

効果

カウンセリングが有効に働くと

・徐々に感情の大きな波に振り回されなくなります。
・心の落ち着きを得られるようになります。
・落ち込んだ自分も受け入れられるようになります。

メリット

カウンセリングが有効に働くと

・自分の感情と付き合っていこうという余裕が生まれます。
・あるがままの自分を受け入れられるようになります。
・家族や周りの人との関係が変化していきます。

費用

最初の3回から6回で、セラピストとの関係を作り、課題の設定をしてきます。(感情のコントロール、対応の仕方など)(2週間に1回、約2か月から3ヶ月、3万円から6万円)

課題の取り組み、(感情のコントロール、自分の認知を知る、行動の変容など)を6回くらいで行います。(2週間に1回、約3ヶ月、6万円)

喪の作業、モーニングワークに大体6回くらい(2週間に1回、約3ヶ月、6万円)を目途にしてください。

双極性障害に悩んでいる方、大崎セラピールームにご相談ください。

双極性障害の感情の波に巻き込まれたままで、生活することは苦しいことです。

辛い感情や記憶をみないようにして、躁的な振る舞いで防衛をしていたのかもしれません。その心理的防衛は、その人が生きのびていくために身に着けた、やむにやまれぬ処世術だったのでしょう。

大崎セラピールームでは、日々の感情のコントロール、モニタリングを行いながら、医療(服薬)とも協力して、躁の下にある、辛い記憶や思い出に、一緒に立ち合いながら、その感情を受容し、嘆きの作業(グリーフワーク)をしていきます。

自分のありのままの感情を受け入れていくことで、無理な躁状態を手放し、あるがままの自分で生きていけることを、大崎セラピールームでは、お手伝いさせていただきます。

品川区、JR大崎駅から徒歩5分の心理カウンセリグルームです

興味のある方は「初めての方へ」をお読みください