食べる事や痩せること囚われて、生活がままならなくなっている。買った物の支払いで毎月困っている。刃物で手首を切ることが止められない。
これらのことが、止めたくても止められないのであれば、それは依存症です。
かろうじて日常生活が回っていたとしても、嗜癖行動に囚われ続けていたら、生きづらい人生を送ることになります。
依存症は、自分の意志の力やコントロールでは治すことは出来ません。専門家の適切な治療や援助が必要です。適切な治療をすることで、依存へのこだわりを手放し、自分の真の欲求に従った、自分らしい人生を送っていくことは可能です。これらの依存症には心理カウンセリングが有効に働きます。
ここでは、女性特有の依存症である、摂食障害、買い物、自傷(リストカット)についての解説と、その対処法、治療法を解説します。また、大崎セラピールームが行う、依存症に対するカウンセリングを紹介します。
女性の依存症
依存症には性差があります。女性のかかりやすい依存症の代表として、摂食障害、買い物、恋愛、リストカットがあります。
ここでは、代表的な女性の依存症を解説します。
摂食障害
拒食症(神経性無食症、Anerexia Nervosa)
摂食障害の人は、ガリガリに痩せてしまうくらいに食べない、食べても吐いたり、下剤を使ってまで痩せた体形や体重を維持しようとします。
他人から見ても、気味が悪いほど、痩せていると言われても、本人は痩せていなければ、美しくないと考えます。痩せている体形に異常なほどこだわり、体重をコントロールしようとします。
食べ吐き(神経性大食症、Bulimia Nervosa)
過食と、嘔吐を繰り返しながら、痩せた身体、体重を維持しようとします。
初めは拒食をして、痩せていられましたが、食欲は人間の根本的な欲求なので、食事を我慢することには限界があります。そこで大量に食べて、吐く、ことを覚えます。食欲を満たすことと、体重を維持することを同時に行えるものが、過食嘔吐です。
ずっと食べることと吐くことに囚われます。スーパーで大量の食材を買い込み、それを食べ、嘔吐するということを日に何回も、繰り返します。
過食(過食性障害、Binge-Eating Disorder)
ストレスやいやなことがあると食に向かいます。普通の人でもストレスによる過食はありますが、それが習慣化し、体重が、標準体重よりかなり超過しても食べることが止まりません。
太った体形を、恥ずかしく思うので、人と会いたくなくなります。さらに、引きこもって過食してしまい、益々外に出られなくなるという悪循環を起こしてしまいます。
買い物
初めは、ストレスがたまると買い物をする程度だったものが、次第に、買い物をしないではいられなくなります。買い物をしていない時も、次に何を買おうかと物思いにふけっています。
洋服やバッグ、化粧品など買った時の高揚感と、その後に襲ってくる「なんでこんなものを買ってしまったのだろう」という後悔と自己嫌悪を繰り返します。
そのイヤな気分を忘れるために、また買い物をします。徐々に金遣いが荒くなります。当然、支払いが出来ないような請求が来ますが、買い物が止められません。
買い物依存の人は、買った後の品物には興味がありません。値札が付いたまま、袋から出していない物がほとんどで、部屋の中は袋から出していない物であふれています。買うものを探している時と買った瞬間の高揚感と興奮にとりつかれてしまいます。
自傷(リストカット)
自傷は、男女差があるわけではありませんが、男性は物や壁を殴ったりして拳をいためたりすることが多く(攻撃的)、女性は、人に気が付かれないように、リストカットをする(自罰的)傾向があります。
今では中高生の1割から2割に自傷経験があります。そのきっかけは、不快な気分の軽減、鎮静の目的で自傷を行います。
リストカットで死のうという意思はないのですが、不快な感情や記憶が出てきたときに、リストカットをすると、ホッとしたり、スーッと解放された気分になり、いやな気分がリセットされた気分になります。
しかし、初めは浅く切っても得られた安堵や解放感が、徐々に得られなくなり、深く傷つけないと初めに得られた感じが得られなくなります。また一日一回切ればよかったのが、日に何度も切らないと、安心できなくなります。
その内に、腕が洗濯板のようになっていき、手首から、上に上がっていき、足に行き、体幹にいくようなります。このような状態になると、大量に出血があり、救急搬送されたり、命の危険があります。
はじめは人にばれないように、こっそりやって、隠せていたものが、袖で隠し切れなくなっていきます。
恋愛・共依存
恋愛依存も女性特有の関係性の依存です。
一人でいることが出来ず、いつも恋愛をしていないといられない人のことを言います。一人の寂しさに耐えられなくて、自分が傷つけられるのような人とも恋愛をして、さらに傷ついてしまいます。
また、ダメンズと付き合って、あれしろ、これしろと指示をして、コントロールしようとします。付き合っている男性(パートナー)を一人前にしようと試みますが、その度ごとに裏切られてしまいます。
「こんな男はコリゴリだ」と思いながらも、お世話が止められません。(共依存)
【参考】:恋愛依存のカウンセリング
何が女性を依存症にさせるのか
これらの依存症に、なぜ、女性がなっていくのか、その理由を解説していきます。
女性に求められる社会的要請
摂食障害や買い物、恋愛依存は、女性特有の依存症ですが、それは社会が求める女性像への過剰に適応をして、破綻した状態です。
「痩せていて、かわいくて、いつも笑顔で、素直で、従順な女性が皆から好かれる」
「女性は、服装がおしゃれで、きれいにお化粧をしていないといけない」
「女性は、優しくて、世話好きで、自分のことより人のことを気にかけていなくてはいけない」
など、世間が求める女性像があり、その通念に外れないように、適応しようとします。しかし、それから外れていることに恐れていると同時に、窮屈であると感じています。
世間が望む女性像に沿えないことを、「自分がいけない」と感じがちです。「自分がいけない」と思うと、自分に対して処罰感情が出てきます。処罰感情がリストカット(自罰的な自傷)へ向かわせます。
耐え難い寂しさ
女性は、人間関係の中で、人とのつながりや、人との共感に重きを置きます。(男性は競争、上下関係で人間関係を作る傾向があります)
また人間関係の中で、人の気持ちを顔色や行動で読み取ったり、自分の思いよりも人の思いを優先することが女性らしさだと教えられてきています。
人から求められることで初めて自分に価値があると思っていて、一人でいることは、寂しい人、かわいそうな人と思いがちです。
その寂しさを感じないために、人の分までお世話をしたり、人の責任までとったりします。(共依存)また、一人でいたくないために(見捨てられ不安)、自分を傷つけるような人と一緒にい続けてしまいます(恋愛依存・共依存)。
女性役割(ジェンダー)への過剰な適応
社会や世間(親)は、女性に上に書いたような女性らしさ(ジェンダー)の適応を求めます。さらに現代では、男並みに優秀であることも(よい大学を出て、優良な企業に就職する)もとめられるようになりました。
当然、そのような世間が求める女性像へ自分自身をはめ込むことに、息苦しさも感じています。
その息苦しさからの、つかの間の解放のために、食べたものを吐き、買い物で憂さを晴らし、家族に隠れてアルコールを飲み、人に隠れて手首を切るようになります。
しかし、そのような過剰な女性役割の適応が苦しい、もう辞めたいと言えずに、依存症という行動で、その過剰適応の破綻を表現しています。依存症になることで、「もうこんなことをしたくない」と言っているのです。
女性の依存症の原因
依存症は、様々な要因が重なって、発症します。一つだけが原因と特定はできません。
またその人個人に原因があるわけではなく、人間関係や家族関係の中で、依存症になっていきます。
ここでは原因と考えられる代表的なものを解説していきます。
幼少期の家族トラウマ
幼少期の家族で、親からの暴力、ネグレクト(無視)、性的虐待があったり、両親が不仲で、喧嘩が絶えなかった、また、明らかに虐待とは言えないものでも、不適切な養育によって、幼少期の自分の欲求を我慢させられて成長した経験と依存症には大きな関係があります。
暴力など、自分の存在を否定される虐待にさらされると、基本的な自己愛(自分は自分でいていい)が育ちません。
また、過剰なしつけのもとで育った場合、親の期待に応えることで、初めて自分の存在が認めらます。過剰に親の期待に応えようとしていい子を演じますが、自我が出てくる思春期頃に、そのいい子であることに疲れ、依存症を発症することで、いい子でいることが破綻します。
幼少期の辛い感情や、記憶を切り離したり、なかったことにするために、摂食障害や、自傷(リストカット)をしだし始めます。
社会が強いるジェンダー(女性らしさ)
「女性は、いつも笑顔で、弱くて、男に従順で、優しくなくてはいけない」
「女性は、いつも自分よりも、人の顔色を見て、人のお世話をしなければいけない」
社会や、世間や、親が知らず知らずに強いる、女性らしさに過剰に適応することで、
「人の顔色ばかり見て、人に合わせてばかりいる」(自分がない)
「(人との関係が切れることを恐れて)怒りを表現できない」(見捨てられ不安)
「人から何か言われると、自分が悪いと思ってしまう」(過剰責任)
という性格が形成されていきます。
女性の依存症は、女性特有の「自分がいけない」という思考のため、自分を傷つける(罰する)傾向のある嗜癖になります。
依存症の治療、対処法
女性の依存症に関する代表的な治療法、対処法を紹介します。
12ステップ自助グループ
依存症の代表的な回復法の代表的なものとしては、12ステップを用いた自助グループです。
アルコール依存症からの回復からAA(アルコホリック・アノニマス)が始まり、今ではあらゆる依存症からの回復に12ステッププログラムが使われています。
女性同士の繋がりを重視したステップを用いた、女性クローズドの自助グループもみられます。
NABA(摂食障害の自助グループ)
OA(オーバーイーターズ・アノニマス)
DA(デッターズ(debtors(債務者)・アノニマス)
LAA(ラヴ・アディクション・アノニマス)
医療
摂食障害が進行すると、命の危険があるほど、痩せてしまうことがあり、その場合は、まず入院をして、体重を戻し命の危険を回避します。
それから、主治医との診察で、食事のコントロール、体重のコントロールを行っていきます。
また、依存症によって、様々な合併症(内臓疾患、うつ病、身体疼痛など)がみられ、それを服薬によって、ある程度回復させる必要があります。
信頼関係もまだできていない、主治医との短い時間診察の中だけで、食事や体重のコントロールは出来ません。
現在は、依存症を専門に扱う病院があります。そこで集団療法、家族会、依存症に関する心理教育、カウンセリングを提供しています。
債務整理
買い物依存で借金が返せなくなった場合、借金を減額・免責する方法を、弁護士や司法書士に相談して、債務整理をしていきます。(自己破産、任意整理、個人再生など)
また、今では各地域の生活相談課で借金問題の相談にも乗ってくれます。
カウンセリング
これらの依存症に対して行われる心理療法としては、主に、認知行動療法と解決志向型セラピーを行います。
認知行動療法では、食べ吐きをする、買い物をする、リストカットをすることで、得られる報酬(痩せた(美しい)体形が保てた、憂うつが晴れた、スッキリした、不快な感情が軽くなった)を学習してしまっています。依存することと報酬を得ることの因果関係が出来ています。日常の問題の解決法として、物質(食べ吐き)や行動(リストカット)に依存することが不可欠になっています。
認知行動療法では、誤って学習した、因果関係や、認識や行動を、検討し、修正していくことで、物質や行動に依存しないで切り抜けていくスキルを身に着けていきます。
解決志向型セラピーでは、
「食べ吐きを止められたとして、どういう生活をしていますか?」と初めに目標を設定して、
「それを行うには、今日何をしたらいいですか?」と目標(なりたい自分)から今を逆算していき、今日やる行動を決めていきます。
家族会
依存症になるのは、個人だけの問題ではありません。人間関係、家族関係の中で依存症を発症しますので、本人の回復には、家族の協力は不可欠です。
家族が、依存症の家族会に出て、本人の対応の仕方、声のかけ方、夫婦の在り方などを学びます。
過剰なお世話(お金を上げたり、身の回りの世話をしたり、借金の肩代わりをするなどの共依存)から離れ、適切な距離をもって接するソーシャルスキルを学びます。
その内に、
「本人の依存症は、家族が壊れないように夫婦間を壊さないためにかかっていたこと」、
「親の期待(親本人がやりたくても出来なかった人生)を過剰に果たそうとしてくれたこと」、
「子どもが自立した後の、お互いの夫婦関係を見つめることがいやで、子どもに依存していたこと」
など、依存症と通じて、家族についての深い気づきが得られます。
依存症に対する大崎セラピールームのカウンセリング
女性の依存症に対する、大崎セラピールームのカウンセリングを紹介します。
依存症の回復は個人によって違い、必ずこうなるとはいえませんが、大まかな道筋を解説します。
本人の対応
今実際に何に困っているか、話してもらいます。安全の場所の確保や、安心して自分の悩みを語れる関係性を作っていきます。
止めたくても止まらない依存を、どうやって害が少ないものにしていくか一緒に考えていき、実行していけるものを話しあいます。
自分の感情や、状態がどういうときに依存対象に走ってしまうのか、どういうきっかけがあるのか、依存してしまった後にどういう気分になるのか、パターンを特定していきます。
依存に走ってしまうきっかけや引き金を避けるためにはどうしたらいいか、いやな気分不快な気分になったときにどういう対処法があるか一緒に考えていきます。
関係性が出てきて、症状が落ち着いてくると、多くの女性の方が、自分の幼少体験、親との関係の傷つき体験のことを話されます。自分の傷ついた幼少期の体験を語り、自分を受け入れ、傷ついた幼少の自分に共感して涙を流し、心の傷を癒していきます。
依存症が回復した後に考えなければいけない、(自分を傷つけない)新しい人間関係をどう作るか。自分の人生をどう生きるか、その人の実存の課題に取り組んでいきます。
家族療法
本人の回復には、家族の協力が必要です。本人に対する距離感(過度な世話焼き(共依存)を止める。適切な会話の仕方)を学びます。
今まで、本人が語れなかった思いを、家族に打ち明け、それを家族が批判しないで受け入れていき、家族も感じていること、思っていることを、正直に語ってもらいます。今まで抑圧していた家族の心の交流を体験してもらいます。
グループ療法
依存症を抱えた方の多くが、幼少期の虐待経験やトラウマを抱えています。本人と話し合い、大崎セラピールームで行っているグループワークに出てもらうことがあります。
同じようなトラウマを抱えた人たちと一緒にグループ療法を行うことで、今まで家族や社会で経験してこなかった、
・あるがままの自分を受け入れてもらった感じ
・人の話を自分のことのように聞ける共感
・この人たちとまた会いたいと思う、人への関心
・自分はここにいていいのだとおもう居場所感や安心感
を感じることが出来ます。
グループ内で、自分のトラウマワーク(嘆きの作業)を、サイコドラマやエンプティチェアを使って、癒していきます。
ワークの中で、傷ついたままになっている子どもの自分(インナーチャイルド)に出会い、傷ついた自分に共感し、受け入れ、和解していきます。その過程で、傷つけた親を手放していきます。
メリット
セラピーが有効に働くと、以下のようなメリットが得られます。
・依存症に囚われない人生を送れるようになります。
・家族やパートナーとの関係が改善されていきます。
・将来への希望を持ち、自分の人生を歩んでいけるようになります。
効果
セラピーが有効に働くと以下のような効果が得られます。
・依存しない時間が長くなり、スリップ(再摂取)しても以前より軽いものになります。
・依存に囚われる時間が少なくなっていきます。
・心が平安な時間が増えていきます。
費用
依存症は一朝一夕で治るものではありません。長い時間をかけて、徐々に回復して行くものです。ここでは概ねの概算を説明いたします。
セラピストの関係を築く期間を、2週に一回、1~4回、約2か月、(1万円から4万円)と見てください。その間にセラピーがクライアントに有効かどうかを見極めるアセスメント(評価)も行います。
本人の思考や行動の修正、家族やパートナーの会話の仕方、目標の設定など行う期間を、2週に一回、6~12回、約3ヶ月、(6万円~12万円)くらいとみてください。
幼少期の傷つき体験の癒し、トラウマワーク、将来の人生の設定を、2週に一回、6~12回、約3ヶ月、(6万円~12万円)くらいと考えてください。
また必要であれば、大崎セラピールームのグループワーク(女子クローズドミーティングやACグループ)に参加することをお勧めします。
概ね、半年から1年間を目途としてセラピーを行っていきます。
また継続的にセラピーを受けたいけれど、経済的に難しいと思っている方は、面接料の相談もしますので、お問い合わせください。
依存症に悩んでいる方、家族の方、大崎セラピールームにご相談ください。
だれにでも依存症になることはありますが、依存症の多くは、幼少期に家族から受けた心の傷に大きな原因があります。
幼少期に受けた傷によって、辛い記憶、嫌な思い出、辛い感情を、嗜癖行動(食べ吐き、自傷、買い物、恋愛)で、一瞬忘れ、リセットすることが出来ました。
そのような自己処方は、自分を守り、家族を守る役割をしていたかもしれません。しかし、依存症を使って生きのびるやり方は、破綻をきたします。自分ではどうにもできなくなっているのであれば、違うやり方を見つけ、自分を守り、傷ついた今の自分と、昔の自分を癒していく必要があります。
また依存症者を抱えたご家族も、長い間、本人の対応に疲れ、傷ついていますので、適切な距離を学び、傷を癒していく必要があります。
依存症からの回復のお手伝いを大崎セラピールームはさせていただきます。