「仕事の最中や、仕事の面接の前に、アルコールを飲んでしまう。」
「借金があるのに、パチンコ、スロットをやってしまう。」
「マリファナや覚せい剤の違法薬物が止められない。」
「毎回、処方薬(眠剤、向精神薬、など)を処方された以上に飲んでしまう。」
など、やるべきではない時に、アルコールやギャンブル、ドラッグをやってしまい、何回も人生に失敗したり、家族に迷惑をかけていませんか?
また、家族の人間に、アルコール、ギャンブル、薬の問題があって、家族がどう対応していいか分からないと悩んでいられませんか?
日常生活に支障が出ているのに、止められないとしたら、それは依存症です。
依存症は、自分の意志では治らない病気です。また家族の愛で治せる病気ではなりません。
依存症治療には、本人の治りたいという思いと、家族の協力と、専門家の力が必要です。
ここでは、男性特有の依存症である、アルコール、ギャンブル、ドラッグの依存症についての解説と、その対処法、治療法について解説をします。
目次
男の依存症
依存症には性差があります。男性がかかりやすい依存症の代表として、アルコール、ギャンブル、違法ドラッグ、DV(ドメスティックバイオレンス)(暴力)があります。
ここでは、代表的な男性の依存症の解説をします。(現代では依存症の性差の比率は少なくなってきていますが、ここでは分かりやすくするために男性のかかりやすい依存症として解説します。)
アルコール
日常生活に支障が出ているのに、止められない飲酒行動の事です。
また飲んではいけない時、場所で飲んでしまう、
例えば、仕事中とか、仕事の面接日とか、緊張する会議や集会の前に飲んでしまうことです。
男性が多いと言いましたが、お酒を飲みながら、家族の食事を作っていたのが、そのうち食事も作れないくらい酔っぱらうようになり、あっという間にアルコール依存になる(キッチンドリンカー)主婦の数も相当数いると言われています。
また、生活に支障が出ているわけではないけれど、「休日には昼から飲んでいる」、「どうやって帰ったか覚えていない」、「二日酔いで会社を休む」、「休肝日がない」などもアルコールの飲み方に問題があります。
また、アルコールは飲んでないけれど、夕方になるとアルコールを飲むことばかり考えているというのも、アルコール依存症予備軍と考えていいでしょう。
DV(ドメスティックバイオレンス)(男から女への暴力)には、アルコールが絡んでいることが多いのも特徴です。
ギャンブル
借金をしてまでギャンブルをやって、止められない依存症です。借金が膨らみ、その借金をギャンブルで勝って返済しようとして、さらに借金がかさみます。最終的には弁護士に頼んで、自己破産するというケースが多く見られます。
パチンコ、スロットがギャンブル依存につながる、代表的なギャンブルです。現代は、スマートフォンの課金ゲームに依存してしまうというケースが増えてきています。
特徴的なのは、競馬やマージャンなど他人と関わっているギャンブルではそれほど借金は、かさまみません。しかし、パチンコ・スロットになって、機械と対峙して他人が関わらないギャンブルにハマると一気に借金がかさんでいく傾向があります。
ドラッグ、違法薬物
マリファナや覚せい剤などの違法薬物のことですが、きっかけは思春期の反抗や、「自分は人とは違うことをやっている」という目立ちたい気持ちから始まり、止められなくなって、警察に捕まり、刑務所に入る、でも出所するとまた始めてしまい、また捕まって刑務所へ入るを繰り返す、薬物依存症者も人も多く見られます。
覚せい剤依存は、オーバードースで死亡するケースも多く、危険な依存症の一つです。
現代では、マリファナからリラックスする要素を抽出したCBD(カンナビジオール)や、やる気や多幸感を感じる要素を抽出した、THC(テトラヒドロカンナビノール)などは、合法的に買うことが出来るようになり、それに依存している人も出てきました。
また、違法薬物ではなくて、処方薬(眠剤や向精神薬(リタリン、コンサータなどメチルフェニデートを使った向精神薬(覚せい剤とほぼ同じ化学記号をしている))や市販薬に依存しているケースも多く見られます。
依存症の家族への影響
依存症は本人だけの問題ではありません。家族を巻き込んで、さらに子どもたちにも甚大な被害を与えます。
共依存
アルコールやギャンブルを止めさせようと、パートナー(妻)が奮闘しますが(アルコールを隠す、お金を渡さないなどの監視コントロール)、それがますます本人の依存を深め、自分で立ち上がる力を奪ってしまいます。
パートナーの方も、こんな人の面倒を見るのはコリゴリだと思いながらも、別れることが出来ません。このような関係を共依存と言います。
共依存になることで、妻や家族(主に母親)が、依存症者の心配やケアで、自分の人生を使い切ってしまいます。
子どもたちへの影響
アルコール問題は、DVへ発展することが多く見られます。当然DVを受けた、あるいは目撃した子どもたちも、トラウマを抱え、その後の人生に、大きな被害をもたらします。
たとえDVはなかったとしても、
「酔った父親が怒鳴ったり、殴ったりが日常だった。」
「母親が父親のアルコール(ギャンブル)問題に頭を悩ましていた」
「夫婦喧嘩が絶えなかった」
「両親の冷めきった、険悪な夫婦関係を見て育った」
「家族にただよっていた緊張した、暗い雰囲気の中で育った」
子どものその後の成長や人生観に、当然大きな悪影響を及ぼします。
家族世代間連鎖
依存症問題は世代間連鎖する傾向があります。
本人のアルコール問題(ギャンブルなども同様)は、自分の父親、あるいは祖父もアルコール問題を抱えていて、家族の依存症問題が世代で連鎖しているという例が多く見られます。
たとえ、親のような依存症の問題がないと言っても、父親(母親)と同じ生きづらい生き方をしていることがよくみられます。
「アルコールは三代祟る(たたる)」と言われていて、本人のアルコール問題(他の依存症も同様)だけでなく、アルコール問題(依存症)に巻き込まれた家族の苦しみ(DV被害、抑うつ、トラウマ、人生の生きづらさなど)が、次の世代へと連鎖していきやすいのです。
何が男性を依存症にさせるのか?
アルコール、ギャンブル、ドラッグの依存は性差があり、男性が圧倒的に多いのです。
なぜこれらの依存症には男性が多いのかというと、
「男は強くなくてはならない」
「男は負けてはならない」
「男はがんばって、努力して、苦難を乗り越えなくてはならない」
という社会や世間が要請する力を志向する、男性の通念(ジェンダー、男らしさ)に囚われているからと考えられます。
パワー幻想
このような物質やプロセス(ギャンブル)にハマることで男性は何を得ているのでしょう?
アルコールを飲んだ時の、なんでもできると思う、万能感。
パチンコが当たったときの、自分だけが特別に勝ったと感じる優越感。
覚せい剤をやったときの、ハイになって、寝ないでも体が動いて、何でもやりあげることが出来ると思う万能感。
です。
酔いの中で、そのパワーを得たと感じる(錯覚)ことが出来きるので、その(嘘の)万能感を手放すことが出来なくなります。
男らしさの病
男性の依存症のカラクリ(構造)を、心理学から見た解説をします。
多くの男性が、勝ち負けや、序列にこだわりを持っています。そういう男性は、人間関係で「ばかにされた」、「下に扱われた」、「上から物を言われた」と、上か下かに敏感です。
自分が下にならないようにするためには、力(パワー)が必要です。力(意志力)で自分の能力を上げ、困難を克服し、他人をコントロールし、他者から承認を得ることで人間(男)になれると思っています。
力(パワー)願望は、それとは裏腹に、常に自分が負けているのではないか、勝ったとしてもいつか負けるのではないかと、内心は怯えることになります。
しかし、その弱音を吐くことを男のプライドが許しません。
そのストレス・プレッシャーに耐えられずに、アルコールや薬物の(偽の)力を借ります。あるいは現実では敗者だけれども、ゲーム(ギャンブル)では、ときどき勝つことが出来ます。本当に欲しかったものを、(偽の満足で)得たと思うので、ギャンブルが手放せなくなります。
依存症の原因
依存症になる原因は、様々考えられます。これが原因だと一つに特定することも困難です。様々な要因やきっかけで、依存症になる可能性があります。
ここでは代表的なものを解説していきます。
世代間連鎖
特にアルコールに関しては、世代間で連鎖しやすいと言われています。父親、祖父、叔父、母方の祖父、叔父などに、アルコール問題を抱えているパターンが頻繁にみられます。
アルコール問題だけでなく、それに付随するDV、うつ病、共依存関係、トラウマなど、依存症家族特有のコミュニケーションパターンが見られ、それ自体が世代間連鎖していきます。
なぜ、世代間連鎖がしやすいのかというと、依存症家族で育った子どもたちは、親たちのコミュニケーションを見て育ちますので、それが内在化されます。その中で育った子どもたちが大人になれば、自分の親と同じようなコミュニケーションをとり、親と同じような人生観、世界観を持つようになってしまうからです。
幼少期体験
幼少期の家族の中で、暴力、ネグレクトなどの虐待があった、親が過剰に押し付けた親の価値観やしつけ(無理強いする受験勉強、学歴主義、過剰な習い事など)をそのまま内面化して大人になった場合、自分があるがままでいいと感じないで育ちます。
虐待の場合は低い自尊心のまま大人になりますし、親の設定した高いハードルや期待を強いられた場合は、常にこのままの自分ではいけないと、もっと努力が必要だと思っています。
そのような家庭環境で育った場合、常にプレッシャーやストレスにさらされているので、アルコールやドラッグなどを使用した時に、ようやくリラックス感や解放感を感じることが出来ます。リラックスするためにお酒を飲む(薬を使う、ギャンブルをする)を学習するため、その使用が止められなくなります。
依存症の治療、対処法
代表的な男性の依存症(主にアルコール、ギャンブル、ドラッグ)に関する治療法、対処法を紹介します。
12ステップ自助グループ
依存症(アルコール)は依然は治らない病気だと言われていました。自分の意志の力でも、医療でも治らないと言われていたものを、アルコール依存当事者たちが集まり、ただ自分の話をし、仲間の話を傾聴するというスタイルでアルコール依存から回復していきました。
専門家を置かず、当事者たちだけで集まり、12ステップと12の伝統というガイドに従い、自分の話をし、仲間の話を傾聴するというスタイルでアルコール依存を克服していきました。
そのグループは、自分たちの寄付だけで運営し、AA(アルコホリック アノニマス)と呼ばれています。
それから、ギャンブルやドラッグなどの依存症、依存症を抱える家族にも同じスタイルが持ち込まれ、依存症の回復の基礎を作ってきました。
まずは、このような12ステップの自助グループへの参加が代表的な治療法の一つです。
日本でも、薬物からの回復施設では「DARK」(Drug Addiction Rehabilitation Center)は12ステップのミーティングを基本にして、薬物からの回復を目指す民間の施設があります。日本のアルコール依存の回復を目指す会としては「断酒会」が有名です。
医療につながる
特に物質依存については、病気ですので、医療の対象です。抗酒剤などの服用や、酒量のコントロールを行っていきます。
また依存症による、様々な症状(内臓疾患、うつ、離脱症状による幻聴幻覚など)がでていることがありますので、それらの治療を並行して、依存症の治療を行います。
現在では、依存症を専門に扱っている病院があり、診察、集団療法、家族会、心理教育、カウンセリングなどのサービスを提供しています。
カウンセリング
依存症のカウセリングとしては、認知行動療法や解決志向型セラピー(ソリューション・フーカスド・セラピー)を行います。
認知行動療法では、お酒を飲む、薬を使う、ギャンブルをして、得られる報酬(憂うつが晴れた、疲れていたのにがんばれた、スッキリした、)を学習してしまっています。依存することと報酬を得ることの因果関係が出来ています。
日常の問題の解決法として、物質や行動(ギャンブル)に依存することが不可欠になっています。
その誤って学習した、因果関係や、認識や行動、意識を、依存しないで切り抜けていくスキルを身に着けていきます。
解決志向型セラピーでは、「お酒を止められたとして、どういう生活をしていますか?」と初めに目標を設定して、「それを行うには、今日何をしたらいいですか?」と目標から今を逆算していき、今日やる行動を決めていきます。
依存症に対する大崎セラピールームのカウンセリング
大崎セラピールームの、依存症に対するセラピーを紹介します。
家族の対応
男性の依存症者は、多くは、病識が低く、本人が治療に訪れることは少ないです。最初の相談は多くは、家族の方(妻、母親)です。依存症治療には家族の協力が必須です。
家族の対応に仕方について簡単に話をします。家族の対応については、引きこもりの親のための対処法と同じですので参照してください。
本人の依存症が抜けられない大きな要素として、家族が過剰に本人のお世話(お酒を取り上げたり、お金をコントロールしたり、行動を監視したりなど)をしています(共依存)。
本人の行動の結果の責任は本人に取らせるようにさせます。その際暴力など、身の危険がある場合は、警察を呼ぶ、逃げる場所を確保しておくなど、身の安全の確保をします。
本人の対応
12ステップの自助グループに参加してもらいながら、面接を行います。
止めたくても止められない病気ですから、セラピーでは止める止めないに、囚われずに、本人が本当は何を欲しているか、アルコールや薬物やギャンブルによって、何を得ようとしているを話しあっていきます。
また幼少期の傷つき体験や、家族の連鎖(アルコールや暴力)についても話していきます。そこで身に着いたコミュニケーションのパターンや、考え方を、無理がある物であれば修正していきます。
家族療法
本人と家族との面接を行います。大体は、本人も家族も、多くは、自分の本心が言えずに、コミュニケーションが空回りしています。
本当は何を伝えたいのか、本当はどう感じているのか、どうしてほしいのかを正直に、I(アイ)メッセージで伝えます。
グループ療法
幼少期に、親からの虐待体験があり、トラウマ体験を持っている方が、依存症の方に多く見られます。
癒しのためのトラウマワーク(嘆きの作業)をサイコドラマやエンプティチェアを使って、グループで行います。
ワークのなかで、傷ついた幼少期の自分と出会い、傷ついた自分に共感し、幼少期の自分を受け入れていきます。
メリット
セラピーが有効に働くと
・セラピーや自助グループに参加しないと回復(メリット)がないと理解できます。
・しらふ(メリット)の時間が長くなります。
・家族が自分を非難する時間が減っていきます。
・家族と酔わないで時間を過ごせます(メリット)。
効果
セラピーが有効に働くと
・再発の期間が延びます。
・心の平安が得られます。
・家族の関係が改善していきます。
・将来に希望が持てます。
費用
依存症は一朝一夕で治るものではありません。長い期間を要することがありますが、ここでは概ねの概算として説明をいたします。
セラピストとの関係を作る期間(1~3回)、とセラピーがクライアントに有効かどうかを見極める期間(1~6回)を目途にしていください。(セラピーが有効でないと判断した場合は、他所の治療機関やセラピー機関を紹介します。)
それから、家族のコミュニケーションの修正、本人の行動修正(依存行動になるきっかけになるものを避ける環境つくり)、目標の設定をしていきます。(6~12回)
本人の傷つき体験の修復、癒しの作業、将来の人生の設定(6~12回)を行っていきます。
半年から1年間を目途として考えてください。
依存症に悩んでいる方、家族の方大崎セラピールームにご相談ください。
依存症は家族の関係性の中で起こります。
多くは、自分を守るため、家族を守るために、なっています。依存症になることで生きのびてきたのです。
依存症にならなければ、もっと悲惨な状況になっていたかもしれません。
しかし、依存症は止めたくても止められない病気です。依存症を抱えた家族も大変傷ついていますし、子どもがいる場合は、子どもへの影響も大きいのです。
依存症は自分の意志の力では治りませんし、家族の愛(支え)だけでも治りません。長期的な専門家の力と自助グループ(仲間とのつながり)の力が必要です。
男性特有の依存症は、またプライドの問題でもあります。
そのプライドを捨て、家族や大事な人との親密な人間関係を作っていく、お手伝いをさせていただきます。