「言動に、ハラスメントが多いと指摘される。」
「人の気持ちを考えろとよくいわれる。」
「人からの評判や人からどう思われるかが気になってしようがない。」
「人からの評価や称賛が心から欲しい。」
「世間的な大きな成功が欲しい。」「億万長者になりたい。」
「負けるのがいやだ。」
「人間関係も損得でしか付き合わない。」
「周りはみんなバカだと思う。」
このような人生観で、考えていたり、行動をしていたりすると、人間関係や家族関係でトラブルや葛藤を抱えやすくなります。
このような人は、好調な時はいいですが、人間関係のトラブルや、人生の挫折をきっかけに、人の目が気になり、外に出られなくなり、ひきこもりがちになり、抑うつ的になります。
また、人を利用するようなこのような人たちの態度や言動に、周りの人たちも傷つけられます(典型的なのがモラハラやパワハラ)。
このような人に、心理カウンセリングは有効に働きます。
ここでは、自己愛性人格障害に関する説明と、その対処法、治療法を紹介します。
また自己愛性人格障害の人の、家族など周りの人たちがどう対応したらよいかも解説していきます。
目次
自己愛性人格障害とは?ナルシスト?
ナルシストな面はどんな人は見られますが、人格障害レベルの人とはどんな特徴を持っているのか解説していきます。
自己肥大している
自分は人よりも特別な才能や才覚を持っていて、それに見合う成功や称賛を受けるはずだと思っています。(何の実績ももっていないにもかかわらず)
自分は高い地位や権力がある人たちと関係を持つべきだと思っていて、特別な計らいを受けて当然だという特権意識を持っています。
自分の目的ためなら人がどうなってもいいと思っている
自分の目的に人を利用すること、不当に扱うことをなんとも思いません。(モラルハラセメントやドメスティックバイオレンスが起きやすい)
周りの人がそのような扱いを受けてどう感じるか、どう傷ついているかということに気が付きませんし、配慮もしません。
嫉妬深く、大柄な態度
自分がもってない物を他人が持っていることの羨ましいさ(羨望)が激しく、それを手に入れるために、相手から奪い取ったり、傷つけたりすることにも躊躇がありません。
人を見下すような、横柄で、傲慢な態度や言動も特徴です。
自己愛性人格障害の人の特徴
横柄で傲慢な態度は、自己愛性人格障害の人の特徴としてあげられますが、以下のような特徴もみられます。
恥の感覚が強い
プライドが高く、面目を保つことが大切で、人からバカにされた、傷つけられたという感覚に敏感です。
人が持っているものを、自分が持ってないことにも、「人が見ておかしいと思うのではないか」、「普通じゃないのではないか」と思って、非常に恥ずかしく感じます。
虚栄心が強い
彼らの横柄で傲慢な態度は、自分の優越性を示そうとするものです。人より勝った負けた、上か下かにこだわり、人が自分のことをどう思っているか、どう見えるかが、自分の中身より重視されます。
虚栄心が強く、人に自分がすばらしく映っているかが大切になります。なので、社会的成功や、成功を表すもの(服や車や装飾品)、肩書きにこだわります。
完璧主義
自分が完璧でないと、自分が欠陥だと思ってしまうので、自分自身の高い自己イメージを保つために、完璧主義になります。
自分は失敗もするし、不完全な人間だと思うと、自分のイメージが壊れてしまいます。なので、そのイメージに合うように努力を惜しみませんが、少しでもうまくいかないと、抑うつ的になります。
失敗を認めない
上の完璧主義と関わりますが、失敗を認めると、自分が完全だというイメージが壊れてしまうので、自分のやった失敗を認めたがりません。
どうしても認めざるを得ない場合は、回避してしまったり、否認してしたりします。
自分が、何が悪かったかを認められない代わりに、他責的なので(「あいつが悪い))、人からの信用を失い、人が離れていってしまうことが多くみられます。
空虚、からっぽ
表面的な成功や、カッコよさ、人からの評判や、人気を得るための自己顕示にしか興味がないので、自分が自分らしくあるためには何が必要なのか、社会的正義に合ったアイディンティティを持つにはどうしたらいいかといった、自分と社会の関係に一貫性を保つことには興味がありません。
また、他者と信頼関係を作る、対等な親密な人間関係作るということも興味がありません。
外の評価が自分の軸になっていますので、実は、自分が本当は何を考えていて、何が真に欲しいのかわかりません。
表面的な虚栄心を取ってしまうと、空っぽで空虚というのがこの人たちの特徴です。
自己愛性人格障害になる構造
このような性格の人は、会社の社長さんや、芸能人、社会階級が上の人に見られます。社会的成功や称賛を手に入れるためには努力を惜しまいので、社会的成功者に多く見られます。
引きこもり、対人恐怖の人たちとの類似性
実は、日本人にはこのような分かりやすい自己愛人格者はあまり見られません。
それよりも、多いのは、人生の途中で挫折をした、引きこもりや、対人恐怖になった自己愛的な人が多いのです。
引きこもりや対人恐怖の人は、人の視線や、人が自分のことをどう思っているかに過敏になって、人が下す世間の評価を恐れて引きこもってしまいます。
引きこもり、対人恐怖のカウンセリングの所でも解説しましたが、引きこもりの人たちの心の構造は自己愛人格障害者と同じです。
ひきこもりの人達は、
「自分は特別な才能が有って、こんなところで終わる人間ではない」
と思いながら、人からどう思われているかが気になって、外に出れなくなっています。
自己愛人格障害の人と引きこもり、対人恐怖の人はコインの裏表の関係になっています。
自己愛性人格障害の原因
その人が自己愛性人格障害になる原因を、一つだけ特定することは困難です。様々な要因が重なって、そのような人格になったと考えられます。
ここでは代表的なものを解説していきます。
社会的逆境体験
貧困などの社会的逆境のために、「ほしいもが買えなかった」、「食べたいものを食べられなかった」、「皆の持っているものをもてなかった」、「それでみんなにばかにされた」、という劣等感や屈辱感を感じます。
それをバネに、「なにくそ、負けてなるものか」とうい負けん気の強さで、社会的逆境を跳ね返して、社会的成功を収めた方にはこのような人格の方が見られます。
ひと昔の、日本では、スポーツ選手や芸能界の人は、このような人が多くいました。
幼少期家族の虐待体験
学童期前の幼少期の子どもは、心の発達の段階で、自分がいかにすごいか、なんでもできるか、という自分の万能感を母親にアピールします。
それを母親は「すごいね」、「よくできたね」、と承認してあげることで、子どもは自分の中に、自分で出来る力を確認することが出来ます。
また、子どもは、母親の喜ぶ姿を見て、自分の行いや存在が母親の喜びになっていると思うことで、愛情の相互性を確認し、自尊心が育っていきます。
そのような関係が出来ていれば、たとえ出来なくて失敗しても、母親の励ましによって、乗り越えることが出来ます。そうやって徐々に、自分が出来ることと出来ないこと、自分の力の及ぶ範囲というものが分かっていきます。
しかしこの時期に、親から虐待やネグレクトなどがあると、親からの承認を貰えていないので、子どもが持っている、肥大した誇大的な自己イメージがそのまま残ってしまいます(固着してしまう)。
子どものままの肥大した自己イメージが、大人になると、自分は限りない才能があるとか、特別な社会的成功や称賛を求めることになります。自分が特別で、周りが劣っていると見えるので、態度も傲慢で尊大なものになります。
親の自己愛の延長として育てられた
親が果たせなかった夢、例えば学歴や職業を、子どもを使って晴らそうとする場合があります。親は子どものためと思いながらも、子どもの希望を無視して、自分の希望を押し付けます。
「自分は医者になりたかったけれど医学部に入れなかった。子どもは塾に入れて、医学部に入れて、医者にならせる。」
「自分は、バレエをやりたかったけれど、親がやらせてくれなかった。だから、子どもにはバレエをやらせてコンクールに出場させる。」
「自分は、ピアニストになりたかったけれど、音大に入れなかった。子どもにはピアノレッスンを受けさせて、音大に入れて、海外留学させてピアニストにさせる。」などなど・・・。
そうやって育った子どもは、子どもは自分の欲望が何かわからず、親の自己愛の延長(ナルシスティック・エクステンション)として成長してしまいます。
成功を収めたとしても、親に言われたからやったので、自分の内から出た信念で勝ち取ったものではありません。
自分自身の中の信念や人生の意義を見つけられず、自分の中は空虚で、カラッポです。大人になっても、親が描いた人生を送ることが目的になり、親が用意した社会的成功にしか価値を見出せなくなります。
自己愛性人格障害の人の対応法、対処法
自己愛性人格障害の人の周りにいる人は、振り回されたり、利用されたり、傷つけられたりすることが多くあります。
周りの人たちがどう対応したらいいかを解説します。
適切な距離を取る
自己愛の人は、押しが強く、ハラスメントも辞さないで自分の要求を押し通してくる傾向があります。また、調子がいい時は、結果が付いてきているので、周囲も迷惑をしているけれど、言いづらい面があります。
まず、やることは、相手との境界線を引いて、出来ることと、出来ないこと、相手の問題と、自分の問題を分けて、相手の問題であれば、相手に返してきます。またできなことは出来ないとはっきり伝えます。
暴力などに訴えてくる場合は、その場から離れる、逃げるということも考慮に入れる必要があります。
専門家に相談する
今まで相手に巻き込まれたり、傷つけられる関係性が続いていたわけですから、それを自分一人で、関係性を変えるのは困難なことです。
心理カウンセリングを受けて、適切な距離を取るやり方を学び、ロールプレイなどを使い実際に相手と距離を取る会話の練習をします。
また危機状況になった場合、どのように、自分の身の安全を確保するかということもカウンセリングの中で話しあいます。
自己愛性人格障害の治療
自己愛人格障害の人は、自分の成功のために努力を惜しまない人ですが、本人は、自己愛が肥大していえるため、他の人に迷惑をかけていようが意に介しません。
治療の機会は、その人が挫折したり、人間関係に失敗などして、抑うつ状態になったときです。
薬物療法
抑うつ状態であれば、抗うつ剤が処方されますし、過度の興奮や衝動性がある場合は躁や興奮を抑える気分安定薬として炭酸リチウムなどが処方されます。
本人の今の状態に合わせて、主治医に相談して、適切な処方を出してもらう必要があります。
しかしそれは、今症状として出ている興奮や衝動性、抑うつなどをコントロールするだけですので、自己愛性人格障害の根本の治療にはなりません。
心理カウンセリング
人格障害の治療は心理カウンセリングが有効に働きます。
自己愛人格障害の人は、他者への共感や、自分の言動に対して、人がどう感じるか、傷つてしまうかということに思いが及びませんので、「他者はどう考えるだろう」、「人はどう感じるだろうか」と人の気持ちになって考えてみる能力を付けていくことが必要です。
そのためには自分の気持ちや感情を認識する必要があります。
面接の中で、
「今おっしゃったことは、こういうことで合っていますか。」
「あなたはこういうことで傷つかれたのですね。」
「ということは、あなたは○○と考えていらっしゃるのですね。」
など、クライアントさんが言ったことを確認していきなたら、セラピストが「そういうことであれば理解できます。そうだったのですね。」と共感を向けていきます。そういった会話を積み重ねることで関係性を作っていきます。
また、集団療法に参加してもらい、人の言ったことを、自分に照らし合わせて考えてみたり、感じてみて、「ああ、あの人の言っていることは理解出る。「あの人の感じたことは自分の感じたことと同じだ」と他人に対する共感力をつけていきます。
人間関係が、対等で、安心できる関係性になっていくと、人から自分が被害を受けたと過剰に感じて、人を圧倒してやろうと思わなくなるので、現実的にはあり得ない社会的成功や、大きな称賛を求めることから、人生の目標が現実的なものへ変化させていくことができます。
このようにして、カウンセリングを通して、現実の受容と、現実検討能力を身に着けていきます。
自己愛性人格障害に対する大崎セラピールームのカウンセリング
時間がかかりますが、カウンセリングで、自己愛性人格障害の人が変容していくには可能です。
ここでは、大崎セラピールームがどう自己愛性人格障害の人にカウンセリングをするかを解説します。
誇大自己の受け入れ
セラピーをする中で、セラピストを自分の理想像として生きます。その理想の人が自分の夢、成功を叶えてくれると思って、承認を求めます。
その自己肥大した理想を、セラピーの中でセラピストは受け入れます。そのプロセスが、傷ついた母親との関係に似たものになっていきます。
実際の母親との関係では、その誇大した自己愛は傷つけられてしまったので、面接の中では、セラピストはメンタライゼーションを使って、一旦その人の誇大した自己を受け入れ、面接の中で、自分が傷つけられない関係を体験していきます。
その中で関係性や信頼関係を作っていきます。
鏡の中の自分との関係をつくる
セラピストは自分と似ている、自分と同じ感性や考え方かもしれない。と、セラピストを自分の鏡のように受け取ります。
自分の思ったことは、セラピストも同じに考えている。絶対的なサポターであり、支持者だと感じるようになります。
こうした時期を得て、自分の中に、自分を支持してくれる人を内在化(セラピストの考えや振る舞いを取り込んでいく)していきます。
と同時に、徐々に、セラピストもひとりの人間で、相手の都合もあるのだと、理解していくようになります。
現実検討が出来るようになる
人には人の都合があって、自分とは違う存在だと、徐々に人の立場を考えるようになっていきます。
それと同時に、肥大した自己愛が、現実的なものになっていき、自分が出来ることと出来ないことが理解出るようになり、自分の現実的な目標などを設定していくことが出来るようになります。
グループ療法の利用
自己愛人格障害の人は、他の人が何どう感じているか、分かりません。グループに参加することで、人がどう考えているか、感じているかを、聞き、自分の感情と照らし合わせて、人の感情を感じる練習になります。
また、セラピストは自分だけを見ていてくれて賛同者だと思っていられた、鏡のような二者関係から、他の人もいて、他の人もセラピストから支持を貰っているのだと理解していけるようなります。
その過程は、二者関係から三者関係へ移行する、社会生活に必要な人間関係を形成させていく、練習にもなります。
その人の人間関係の成熟にグループ療法は有効に働きます。
効果
自己愛人格障害の人のセラピーには変化は時間がかかります。ですが、時間をかければ効果は表れます。
セラピーが有効に働くと
・不安や心配が軽減していきます。
・孤独感が癒えていきます。
・人の評価や評判がそれほど気にならなくなります。
メリット
セラピーが有効に働くと
・過度な成功や称賛を求めなくても満たされた感覚が生まれます。
・他人と親密な関係を作れるようになります。
・現実的に人生の目標を持ち、それに向かって努力してくことが出来ます。
費用
自己愛人格障害の人の変容には、年単位の長期にかかると考えてみてください。
最初の6回くらいで、今何に困っているか、セラピーでどう変化していきたいか、目標設定の時期と考えてください。(2週間に一回、約3ヶ月、6万円)
またこの時期は、セラピストとの同盟関係・信頼関係を作る時期でもあります。
次の6回から12回を、目標や課題に向かって取り組む、時期と考えてください。(2週間に1回、約6か月、12万円)
次の6回で、現実に着地して、社会へ戻っていく、実践期と考えてください。(2週間に一回、約3ヶ月、6万円)
また適宜、必要な時は、大崎セラピールームのグループワークに参加してもらうことがあります。
自己愛性人格障害に悩んでいる方、大崎セラピールームにご相談ください。
自己愛性人格障害の人の、自分の自己中心的な生き方も、幼少期の家族関係をみると、生き抜くうえで、そのような人格が出来上がってしまったと考えられます。
このような人は、社会的成功を収めもしますが、反対に、何かの躓きや、挫折で心が折れてしまい、抑うつや対人恐怖になってしまうというパターンが多く見られます。
その人の心の奥底には、幼少期に傷ついた子どもが、怯えてたまま、放っておかれています。
一方で、自己愛性人格障害の人は、成功のためには努力を惜しまない人です。
その力はその人の能力であり、生き抜く力なのです。その力を、過度な虚栄心を満たすことだけではなく、自分の真の人生の目標や野心に向かって、生きていく事は可能です。
大崎セラピールームでは、傷ついた幼少期の自分を癒し、今まで生きのびてきた力を使って、自分らしい野心を実現することをお手伝いさせていきます。
また自己愛性人格障害の人が家族にいたり、職場の上司だったり、近くにいると、巻き込まれたり、傷つけられたり、利用されたり搾取されたりしがちです。
大崎セラピールームでは、自己愛性人格障害を持つ家族の方や、近くにいてどう対応していいか分からない人にもセラピーを行っていますので、ご気楽にご相談・お問い合わせください。