暗示と神経症(ノイローゼ)

暗示とノイローゼ

今回は、セラピーにとって大事な「暗示」のことを書いてきます。

「暗示」はウィキペディアには「言葉や合図により、他者の思考、感覚、動作を操作・誘導する心理作用のことを言う。暗示にかけられたものは自然にそうなったと考え、それが他者による誘導によるものであることに気が付かない」とあります。

暗示とは?

前回にも書きましたが、そうかどうかわからないことを、ああかもしれない、こうかもしれないと思い悩み、思い悩み、悩みを悩んでいるような状態を神経症的と書きました。そのような頭の中でグルグルと永遠にループしている状態から、身体に症状が出ることを心身症といいます。

学校に行きたくない子どもが、行きたくないと言えずに、本当にお腹が痛くなり、医者に行っても内科的に悪いところが見つからない、で、学校をお休みしていいよと言われると、さっと腹痛が治ってしまう、というのは分かりやすい例です。

この子どもはわざとやっているわけではなくて、無意識に身体に症状を出すわけです。頭では学校に行かなくてはいけないと思っていて、でも行きたくないと言えばお母さんから怒られる、でもお腹が痛くなれば、お母さんも行かなくていいと言ってくれるし、自分も怠けているのではなくて、お腹が痛くて学校を休むのだと言い訳が立ちます。みなが傷つかずに目的を達成できるわけです。

暗示ということでいえば、お腹が痛くなると自分で暗示をかけていることになります。無意識に自分で暗示をかけることで目的を達成するわけです。神経症(心身症)もこのように自分が無意識に思い込んで(暗示をかけて)かかるものです。

不合理な力

心理療法においてもこの「暗示」を大事な要素の一つです。病気にかかるのも自分への暗示ですし、病気からの解放も暗示が大事な要素になります。

クライアントは今の状態が苦しいから何とかしてほしいと思ってセラピーに来ます。そしてこのセラピストなら治してくれると(不合理な)期待、希望を持ちます。セラピストはプロなのだから治してくれるはずだという万能的・魔術的な力を期待をするわけです。

この期待や願望自体が不合理なのですが、心理セラピーにはこのような思い込みは大事です。

「どうせ無理でしょう。」と思っている人は来ませんから。

(因みにこのようなクライアントの不合理な期待や希望を悪用するのが、カルト宗教であり、自己啓発セミナーです。)

同様にセラピスト側もなんとか自分がクライアントを治して見せると、自己暗示にかかっていて、この関係性があって回復が進みます。

普段使っている暗示

「なんだ、そんなことか」とお思いでしょうが、このようなことは私たちの周りによくあることです。分かりやすい自己暗示の例は、偽薬(プラセーボ)が分かりやすいでしょう。なんにも効果のない偽薬を「これを飲めば治ります」と医者に言われて、飲んだら、実際に病気が良くなるというものです。このほどさように自分を思い込ませる力は大きいわけです。

症状が取れるカラクリ

心理セラピーでは、このような過剰に期待することを転移(transference)といいます。この転移を操作(go through)していわゆる「症状」というものを取っていきます。しかしその人にとっては必要があって、その症状が出ているので、なかなか取れません。これを抵抗・防衛といいます。

上の例で言えば「君は学校に行きたくないと言えなから、お腹が痛くなっているんだよ。」と伝えても「それは違う。」といわれて、頑固な腹痛が続いてしまうでしょう。プライドもあるし、その症状を使って何とか切り抜きてきていたのに、その退路を塞がれてしまったら、本当に切羽詰まってしまうからです。

そのような苦しい抵抗・防衛を使わなくても、いいんだと、クライアントが腹落ちして思えるようになったときに症状は取れます。

母的依存

それをセラピストと母親的な関係の中で、クライアントが部分的に退行(赤ちゃん返り)を起こして、そのままの自分の受容し繋がった感じ、肯定されている感じを感じる時に、このままでいいんだという暗示がかかり、症状を必要としなくなります。その結果、回復をしていくわけです。

かかるも暗示、治るも暗示です。